そろそろ趣味についてまとめようナ

ファッション・革靴・万年筆・子育て

 

MENU

ぼくと店員さんと~思い出の靴は何ですか~

 

「読者登録」や「B!ブックマーク」はかなりモチベーションになります。

ポチッと応援お願いします。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 

f:id:sorosoro40:20200311220656p:plain

 

 

スクロールで流れるタイムラインには、氾濫する文字数。

目についた画像に「いいね」をするルーティーン。

目を留めたのは、11文字の発言だった。

 

思い出の靴は何ですか?

 

「いいね」の真上で親指が止まる。

 一旦、呼吸を整えて、我が家の靴棚のことを考える。

 

・傷だらけのオールデン

・初めてのストレートチップ

・妻からもらった美しい靴

 

どれだって、自分の足と歩んできた「足跡そのもの」だ。

その中から、選ぶとすれば…

 

ふと、思い付きで

「所有する靴でないとダメですか?」

なんてコメントしようと思ったけれども、やめた。

他のコメントでは、各人の名靴が挙げられている。

その人の「足跡」「思い」「記念」として。

そこに水を差すようなコメントをわざわざするようなこともない。

 

スマホを閉じ、僕の昼休みは終えた。

仕事に戻らなければならなかった。

思い出の靴は何ですか?

その質問に答えるなら、「買わなかったあの靴」だ。

 

 

何年か前、僕が靴にそこまで夢中になってなかった頃。

雑誌で「革靴はローテーションを組まなくてはいけない」なんて文言を見た。

…ことがたぶん、きっかけで2足目の革靴を探しに出た。

 

ちなみに、一足目はREGALのプレーントゥ。

祖母が就職祝いに買ってくれたものだ。

「この靴が、履けなくなるころには、ワタシはもうおらん。大事にせいよ。形見になるかもしれん」

なんて言って。

 

そんな祖母は、数年前履きつぶしてしまったこの靴を見て

「ぼろぼろの靴だね。また買ったんか?」

なんて、言っていた。煙草をふかしながら。

 

そんな未来が待ち受けているなんて知らないREGALを履いて、靴を探しに行ったのは地元の個人セレクトショップ。

センスが良くて、いついってもおもしろいお店だった。

…当時は「高い服売ってんだから、いい靴もあんだろ」みたいな感覚で。

 

そんな感覚で訪問しているからか、ドアを開ける手も緊張していたと思う。

白を基調とした店内が、光の反射でまぶしくて、なにか照れ臭い。

靴を買いに行って「照れ臭い」なんて今はもう感じないのに…感じないからこういった気持ちは覚えているのかもしれない。

 

「久しぶりだね」

 

男の店員さんはひと回り年上らしい。

以前に、訪問した時に教えてくれた。見た目は若いし、そんな風には見えなかったんだけど。

 

「はぁ」とも「はぃ」とも言えないようなあいまいな返事をして、言う。

 

「革靴ってありますかね」

 

これだけのことを言うのにも、なにか恥ずかしかったのだから当時の自分がいかに「靴を買う」ことに慣れていなかったのかよくわかる。

 

店員さんも、プロだし、色々と察してくれていたのだろう。

「どんな靴?」

「サイズは?」

「どうして買いに来たの?」

なんて、1問1答形式で、話を進めてくれた。

 

持ってきてもらった候補の詳細はさすがに覚えていないけれど、結構いろいろあったと思う。

日本の服飾ブランドのオリジナルから、英国靴。

色々試したけれど、どうしたらいいのかなんてよくわからなかった。

でも、ひとつだけ輝いていたのは「店員さんの足元」だった。

 

「その、履いてるやつは?」

「あぁ、これはオールデン」

「知ってます。コードバンのやつが有名ですよね」

「そうだね、これはウチで取り扱ってないんだけど…」

 

店員さんの顔は何かを思い出しているようだった。

「これは、僕がこのお店に立つことになった…10年位前かな?気持ちの変化があって買ったんだ。

 その当時は、スニーカーばかり履いてたんだけど、オーナーが『革靴も売るんだからなにか履け』っていってね。

 どうせなら、長く履けて、自分とともに育つ「一足」を...ってね。

話してて、そっかもうそんなに経つのかって思ったよ」

 笑いながら話す店員さんも、その足元で鈍く光るオールデンもカッコよかった。

 

「いい、ですね、そういうの。10年後にそういった靴履いてたいですし、少なくとも出会ってたいです」

「そうか、そういうポイントなら…」

 

 

「これは丈夫だよ。たぶん、長く長く相棒になってくれると思う。」

店員さんがもってきてくれたのは、想像していたタイプの靴じゃなかった。

僕が想像する「革靴」というのはもっと、スーツに合わせるような、ドレッシーなものだったから。

「なんていう、靴なんですか?」

「PARABOOT のミカエル」

 

それが、ミカエルを始めてみた瞬間だった。

 

すごく重そう。

女子っぽい。


f:id:sorosoro40:20200311172233j:image

 
「この靴はノルウェイジャンウェルテッド製法という、製法で…」

店員さんは、ミカエルについていろいろと教えてくれた。

 

チロリアンの雰囲気はなんとなく「森ガール」という当時でも死語だったファッション用語を想起させたし、ごついラバーはなにか想像以上のインパクトで僕を圧倒した。

 

白く、陽光の入る店内。

おしゃれな店員さんの、商品の魅力を語る言葉。

その手にある存在感あるリスレザーの靴。

 

徐々に気になり始めていた。

「試着する?」

店員さんの後押しに、「はい」と答えていた。

 

ドキドキしたことも覚えているし、その時にいた別の女性の店員さんや男性の客がシャンボードを履いていた映像も脳に浮かぶ。

ある瞬間というのは人は忘れられないし、その後の記憶の反芻で強化されていくのだろう。

 

フィット感は上々。

2ホールなのに以外。

ラバーの柔らかさはは歩きやすく、気持ちがいい。

 

…いい。

「10年、持ちそうでしょ」

店員さんの表情も「自信がある」という感じだった。

 

そこで僕とミカエルの10年計画が始まれば劇的だったのだけれど、そうはいかなかった。

 

「自信がない」のは僕だった。

ミカエルの「カジュアル」を前面に前に出したデザインを、「かわいい」と思える見た目を30代半ばまで魅力と思えるのだろうか。

当時「正統派」と感じていた、いわゆる英国靴や、店員さんのオールデン、それらとはちがう独特の靴。

今思えば、「杞憂に終わる」だろうが「自分の意志」に自信がなかったのだ。

そして、その数日後、別の靴との出会いがあり、ミカエルとは距離を置いてしまった。

 

 

 

その後、まずその店員さんが独立し、いなくなった。

次に、そのお店がパラブーツを置かなくなった。

最後に、そのお店もなくなった。

 

10年はたってないけどそれなりの時間...7年がたった。

僕は仕事も変わり、結婚もし、子供もできた。

その間に、いろいろな靴を買った。

昔ほど「ドレッシー」なものだけでなく、カジュアルな靴も手にしたし

オールデンのコードバンも、ビスポークも。

 

仕事が終わり、さっきの質問を探す。

だれかが「ミカエル」と答えていないだろうか。

答えていたらどうなのだろうか。

 

靴に恋をしているみたい

 

自分でも笑ってしまうような表現だなとおもう。

 

7年は無理でも、数時間、タイムラインをさかのぼれば、質問は出てくる。

思い出の靴は何ですか?

質問に返答はしない。

家に帰って、Blogにでも書いておこうと思った。

 

 

10年後にそういった靴履いていたいですし、少なくとも出会っていたいです。 

 

10-7=3

 

こじつけだが、残り3カウント。

カウントダウンにはちょうどいい数字かもしれない。

探してみよう、と思う。

 

f:id:sorosoro40:20200311220628p:plain